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ファンクラブからファンコミュニティへと移行する時代 / 対談 with 佐渡島庸平 #2

平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。今回の対談も前回に引き続き株式会社コルクの代表取締役会長である佐渡島庸平さん。

「 クリエイターはある程度「 近い憧れ 」の存在にならないと、これからの時代はしんどい 」インターネットによって、個々人のメディア化が可能になった今、クリエイターにとってファンコミュニティは必要不可欠なものになってきています。クリエイターとファンコミュニティの適切な距離感、ファン同士が関係を築くためには何が必要なのかについて前回に引き続き、佐渡島さんに伺います。( # 1 はこちら )

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佐渡島庸平(さどしまようへい)
2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティー形成・運営などを行う。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテインメントのモデル構築を目指している。https://corkagency.com

文化としての疑似恋愛コミュニケーションができるか

平良真人(以下、平良):
fanicon を利用してくれているアイコンの方達の、ファンとのコミュニケーション法は様々なのですが、どのようなコミュニケーションをとるのがいいと思われますか?

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島氏):
5年に1度のコンテンツで、ガシッとファンの心を掴みきれるような方なら別ですが、そうした方以外は、ある程度「 近い憧れ 」でいないと、これからの時代はしんどくなっていくと思います。

ファンの方が、いくらアイドルを追いかけていたとしても、マインドシェアはどうしても家族にとられますよね? それと同じで、適度な「 近さ 」は興味を持ち続けてもらうために必要だと感じています。

「 作品以外のコミュニケーションを必要としないレベル 」で思いつくのは宮崎駿さんです。宮崎さんの作品のようなとてつもなくいいコンテンツがあれば、たまにしかファンとのやりとりをしないという選択肢もありでしょう。でも、あそこまでのコンテンツをつくれる人はなかなかいません。

平良:
「 近しい憧れ 」であるために、ファンとの間で「 疑似恋愛 」をするコミュニケーション法はありだと思いますか?

佐渡島氏:
「 極端な疑似恋愛 」の関係性を保てるのだとしたら、それもありだと思います。本当の恋愛は、相手に対して、「 できるだけ包み隠さずに接して欲しい 」と思いますよね。でも、お互いに擬似恋愛というゲームを楽しんでいるんだとしたら、プライベートな部分を隠されても、キャーキャーするのを楽しめる。

花火の「 たまやー 」の掛け声のように、本当にキャーキャー思っているわけじゃないけれど、それを暗黙の上で成り立っている「 楽しい 」という感覚ってあるじゃないですか。そうした、「 文化としてのキャーキャー 」がつくれる人は、疑似恋愛的なコミュニケーションが可能だと思います。

平良:
アイコンとして登録してくださっているアイドルの中には、自分が食べたラーメンの食べ跡などを投稿する方もいます。いわゆる、かわいい・綺麗なイメージとは全く違う投稿です。それも疑似恋愛的なのかもしれませんね。

佐渡島氏:
恋愛は、甘える姿など、普段他人には見せられない性的な部分を相手に見せられますよね。疑似恋愛的コミュニケーションだと、性的でプライベートな部分は見せられないから、代替物が必要です。

ファンの方が、「 自分に対して、外部には絶対に見せない顔を見せている 」と感じられる何か。人によっては、それがラーメンの食べ跡なのかもしれません。疑似恋愛的コミュニケーションでは、性的なものへの代替物として、何を見せるかをうまくコントロールできる人が勝っているのだと思います。

平良:
写真やテキストで、性的なものへの代替物を毎回思いつくのは大変そうです……。

佐渡島氏:
動画のほうが写真やテキストよりも情報量が多いので、その人の弱みが見えやすい。ファンとのコミュニケーションにおいて、動画配信はうまく活用するといいと思います。

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オンラインコミュニティのヒントはマッチングアプリに?

平良:
 fanicon はクローズドなコミュニティなので、ファンを増やすことに主眼を置いてないです。ファンが勝手に増えていくことはあっても、アプリ内で増やす機能はあえてつくっていません。しかし、将来的にはアプリ内でファンが増えて行くように取り組まなければいけないことだと思っています。

佐渡島氏:
佐藤尚之さんのご著書『 ファンベース 』には、「 Sale to the community 」ではなく、「 Sale through the community 」と書かれています。「 Sale to the community 」と捉えてしまうと、コミュニティが搾取対象になってしまいます。

アプリ内に、「 アーティストが好きになる・他のファンが好きになる・他のファンが増える 」の3つUI・UXを内包できたら、ものすごく強いサービスになるでしょう。どのようにすればそうなるのかは僕もわからないのですが、マッチングアプリは参考になると感じます。

最近だと、『 with 』というアプリの設計に注目しています。『 with 』では、出会いの前に、性格・心理診断や嗜好入力があって、内面的に相性がいい相手を探せるようになっています。マッチングアプリには、ファンコミュニティの中で、「 他のファンを好きになる 」ということが起きるための解決策へのヒントが入っていると思っています。

平良:
fanicon にも、デジタル会員証で、他のファンを見れる機能があるのですが、それだけだと「 他のファンを好きになる 」まではいかないかもしれませんね……。

佐渡島氏:
写真だけだと、「 いいな 」と思っているだけで、「 好き 」にはならない。オンラインコミュニティは、オフラインで対面できる機会が限られているからこそ、「 会う前に相手を少し好きになっている 」という設計をすることが重要になります。

SNSはリアクションの設計が優れていますが、人が相手を好きになるのは、リアクションだけではなく、なんらかのキャッチボールが起きたときです。マッチングアプリは、知らない人同士を仲良くさせようとする設計に力を注いでいるので、キャッチボールの起こし方がよくできています。

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「ファンクラブ」から「ファンコミュニティ」にするために必要なこと

平良:
fanicon でも、ファンとアイコンのオフ会は頻繁に行なっているのですが、オフ会でも「 ファン同士がお互いを好きになる 」という状態をつくるのは容易ではないと感じています。

佐渡島氏:
クリエイターとファンは、どうしても1対 N の関係になりがちですからね。コルクでは4月からけんいちさん( 元ロードオブメジャーの北川けんいちさん )のマネージメントをしています。

先日、京都でけんいちさんのライブを行なったのですが、ライブ中には、隣にいるファンと手を合わせるなど、ファン同士で触れ合えるような仕組みを取り入れました。

オフ会では、ファンはその対象を見に来ているわけで、周りの人と仲良くなろうとは思っていない。ですが、そのままだと「 ファンクラブ 」ではあっても、「 ファンコミュニティ 」にはなりません。ファンコミュニティでは、1対 N の関係ではなく、N 対 N の関係が築かれることが理想です。

そのため、ファン同士の身体的な触れ合いを取り入れたり、アーティスト本人からも、「 ファン同士が仲良くなってくれたら嬉しい 」というメッセージを出してもらうことが必要になると思います。

平良:
身体的な触れ合いが、ファン同士が仲良くなるために作用するとは面白いですね。

佐渡島氏:
僕が主宰している「 コルクラボ 」でも、月に 2 回あるオフ会で、身体的な触れ合いが起こるアイスブレイクを毎回取り入れています。大人になると、恋人や子どもの体以外に、人に触れる機会ってほとんどない。でも、人は物理的な触れ合いがあると、自然と仲良くなっていくものです。

オフ会のときに掲示板をどう使うかも重要です。ほとんどの人は、オンラインでの投稿に対して心理的なハードルを感じています。その前提で、オフ会では掲示板に投稿するワークを必ず入れたり、投稿に対する心の鎧を外すための工夫をしています。

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コミュニティ内にヒエラルキーをつくらないための施策

平良:
ファン同士が仲良くなって、ファンコミュニティが形成されたら、その中でヒエラルキーのようなものができてしまうのではないかと思うのですが、それに対して工夫されていることはありますか?

佐渡島氏:
コミュニティでは、メンバーが古参になってしまうと、新しい人が入りづらくなってしまいます。入ってきても、「 この会話はしていいのかな……? みなさん、もう知ってるかもしれませんが 」など、不要な前置きが毎回必要になってきてしまう。それを防ぐためには、リーダーシップとフォロワーシップが交互に変わるような設計が必要になると思っていて、コミュニティ内で実践しています。

平良:係や委員が定期的に変わる、学校と同じですね。

佐渡島氏:
個々人に与えられる役割の面でも、学校の仕組みはよくできているなと感じます。学校は、学期や年度ごとに係を変えたりするじゃないですか。役割の固定化はどうしてもヒエラルキーを生みやすいので、「 入れ替わるのはいいこと 」とコミュニティ内で周知するようにしています。

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「ホームパーティー感」が現在のオンラインコミュニティの課題

平良:
佐渡島さんがファンコミュニティに対して感じている課題はありますか?

佐渡島氏:
今のファンコミュニティは、どこかホームパーティ感があるんですよね。クリエイターが「 ホームパーティを開くからみんな来てください! 」とたくさん言わなきゃいけないような感覚です。でも、ホームパーティって、招く側も行く側も疲れるじゃないですか。

平良:
たしかに、ホームパーティーに呼ばれると、「 手土産はどうしよう、誰が来るんだろう…… 」と、気がかりになってしまいます(笑)。

佐渡島氏:
そうなんです。「 レストランでパーティーやるから、みんな来てね 」のほうが楽ですよね。その気軽さがありつつ、ホームパーティー並に勝手を知った感じで楽しめるのが、いいUI・UXだと思います。そうなるために、僕も様々な試みをし続けています。

平良:
11月にはコミュニティについて書かれた、「 WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE 」のアップデート版が出版されるそうですね。

佐渡島氏:
前作では、「 納品主義からアップデート主義へ 」と書きました。でも、僕自身が続編として書いたら、それはコミュニティをアップデートできたとは言えないだろうと思って、今作では本の内容から構成、インタビューイーの人選など、すべてをコミュニティのメンバーに完全に任せています。僕はインタビュイーの一人として登場するくらいで(笑)。

平良:ものすごいアップデートですね……。(笑)手にとって読めるのを楽しみにしています!


構成・文:代 麻理子

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