熱狂と距離感_2

エンターテインメントは空恐ろしくないと熱狂できない / 対談 with 吉田尚記 # 2

THECOO 代表 平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。
今回のお相手も引き続きニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん。

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<プロフィール>
吉田 尚記 (よしだ ひさのり) ( @yoshidahisanori )
ニッポン放送アナウンサー
現在は毎週月曜日から木曜日深夜24時から放送中のワイド番組「 ミューコミプラス 」を担当中。
放送業界で一二を争う"オタク"としても有名で、ニコ生やテレビ番組への出演、マンガ大賞の発起など、ラジオにとどまらない活動を行っている。
著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)は累計13万部を突破している。

” アイドルは昔で言うなら僧侶なんです ”
前回(# 1  )アイドルの魅力とは何なのか!?を教えていただきました。
今回は更にアイドルビジネスの考え方やヒットの法則について深掘りしていきます。

わざと感じるコンプレックス

平良真人(以下、平良):アイドルは何かが欠けているから頑張っているみたいな話を聞いたんですけど…。

吉田尚記氏(以下、吉田氏):分かります、分かります。

平良:その感情を吉田さんは分かるんですよね?

吉田氏:めちゃくちゃ分かります。

平良:それってどういうことなんですか?僕はそこが本当に分からないんですよね。表裏一体みたいなことを言うんですけど…。

吉田氏:
表裏一体だと思いますね。
例えば、ZOC というアイドルがすごい分かりやすい例で、ZOC はアイドルの初歩としてはとても勉強になるグループだと思います。

ZOC は 5 人グループなんですけど、そのうち 2 人はヤンキー。1 人が横須賀の生粋のヤンキーで、もう 1 人は少年院に行ったこともあるヤンキーなんですね。この 2 人は明らかに欠けていますよね。そして 3 人目は引きこもりだった子で、この子もまた欠けている。4 人目は天真爛漫なタイプなのだけど、1 回いけると思ったユニットがお金の問題で終わってしまって、そこに欠落があるんですよ。そして最後の 1 人は、これだけ個性がある 4 人の中で絶世の美少女、という訳ではないのに、正面突破でかわいくあろうとしている。

平良:グループの中にいて個性が欠けていると思っていると。

吉田氏:
そうです。ZOC は 5 人全員のコンプレックスがわかりやすく可視化されている。ほぼ完璧な分かりやすいグループなんですよ。
5 人目の子なんていわば普通なんですけど、異常の中で普通であろうとすれば、それはもう逆に異常。コンプレックスに思おうと思ったら思えてしまうわけですよ。だから、ある意味もう無理やりなんです。
そして、これはアイドルに限ったことじゃ全くなくて他の人と何も変わらないんですよ。今の時代何がコンプレックスかわからない。

平良:まさに、そうですね。

吉田氏:
比較的みんなコンプレックスに感じる必要がないことを、わざとコンプレックスに感じていたりして。周りからするとそれ主観だよなみたいなことだったりするんですよね。
でも頑張っているじゃないですか、最終的に。

その欠落のパターンをアイドル側はいっぱい持っていて、自分のコンプレックスに近いと共感する人もいるとは思うんですけど、僕は結果として頑張っていれば欠けている理由はどれでもいいんじゃないかなと。

平良:その共感は昔ヤンキーだった人は同じようにヤンキーだった人に共感する比率が高いんですか?

吉田氏:
ヤンキーは分かりやすいパターンで、昔ヤンキーでドロップアウトした経験がある人が「 自分と同じように踏み外した道を正そうとアイドルを頑張っているんだな 」と共感してヤンキーアイドルを応援するパターンもあれば、「 自分にはこんな人生は無かったな 」と苦労知らずのお嬢様アイドルを応援するパターンもある。
一方で、真面目に生きてきた人や、お嬢様で苦労が無いことにコンプレックスのある人が「 自分にはヤンキーみたいな人生無かったな 」とヤンキーアイドルを応援することもあるわけです。
もう理屈と膏薬はどこにでもつくので、アイドルを応援する理由はどこからでも見つけられるんですね。だから、結局のところ理由じゃないんですよ。

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複数人の集まりで描き出す 1 つのメッセージ

平良:なるほど、そういうことなんですね。
その人が持っているそれぞれの欠落が歌やダンスなどの表現を通してストーリーになっていくってことなんですよね?

吉田氏:
そうですね、曲やステージングは全部演出ですよね。
ただ 1 つの名前とキャラクターから発することができるメッセージは 1 つでも、グループアイドルは複数の少女や少年が集まることによって、1 人の架空の人物を描き出すことができるんですよ。
その子がどんな表情を見せるかは、曲作り含むプロデュース論なので、予め楽曲に絶対的な価値をおいて楽曲のストーリーに沿った役者を揃える場合もあれば、先に役者が決まっていて、その役者に合わせて楽曲が決まっていくパターンもあると思います。

例えば AKB は曲のラインナップが幅広いので、ごく普通の女の子が当て嵌まるようにできていて、メンバーに超絶美少女をあまりいれないみたいなコンセプトになるんですよね。
そして、もっと言うと、本当は秋元康さんとかプロデューサーのファンだけど、プロデューサーのファンと言いづらくて AKB が好きと言っている人もいると思いますよ。

平良:好きになる理由はいくらでもあるし本当になんでも良いのですね。

吉田氏:
まず自分から意志を持って好きになる人もいれば、周りの人に影響を受ける人もいますよね。周りの人に影響を受けながら生きることが 1 番感性のままに生きていることになる人も結構いて、だからブームがあるんだと思います。

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アイドルは意外性への期待値が高い

平良:その周りを巻き込むブームやヒットを生み出す共通要素って見出せたりするのですか?

吉田氏:
以前、秋元康さんが「 売れたものの理由は全部分かるけど、売れなかった理由は分からない 」と言っていたんですけど、売れたものは後々解説ができるけど、良い点がいくつもあったのに売れなかったねということは多くて、本当にその通りだなと思います。

平良:
僕は全く逆のことを考えていて、うまくいったビジネスや会社の歴史って共通性がないなと。その時代のテクノロジーの潮流だとか変数が多すぎて。一方で上手くいかなかったパターンは共通点が多いなと思っていました。アイドルプロデュースにおいては逆なんですね。

吉田氏:
野村監督は「 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし 」と言っていたりしますし、確かにビジネスはそうだなと僕も思うんですけど、エンターテインメントって実は勝負じゃないんですよね。負けの美学みたいな話もあって、勝たないほうが魅力的だったりもするし、これはもう計算できない。
究極の所、エンターテインメントって少し空恐ろしいものじゃないと熱狂できないんだと思うんですよね。

例えば一休禅師は歴史上最大のアイドルの 1 人だと思うんですけど、もう空恐ろしいですよね。お坊さんなのに破戒僧。本人もよく分かっていないんだと思うんですよ。なぜこれがしたいのかとか論理じゃない気がするんですよね。

だから ZOC みたいに行儀の良い子が 1 人もいないアイドルは新しくて面白いわけですよね。もし ZOC が 5 年前に出てきても消化しきれなかったと思うんですけど、今はお客さん側の消化力が上がっているから、受け入れられる状態になっています。

平良:売れるまでは何が当たるかわからないわけですね。

吉田氏:理由は後からわかるものですね。でも狙いは持って飛び込まないと検証はできないですからね。

平良:そうなると過去に上手くいったものを少しずつ変えながら常に新しいチャレンジしていく必要性があるわけですよね。

吉田氏:ただ、初めて見たみたいな面白さと、売れたかはまた別の話にもなるんですよね。
どうしてもヒットの指標って経済的なところになってしまうものの、あくまでそれは経済的な話でしかないんですよね。

平良:要するに、経済的にはうまくいかなかったけれど、あれは新しかったね!という人はいっぱいいると。

吉田氏:いっぱいいますね。そしてその前例をうまく今の仕組みと繋いで成功したパターンもいっぱいあります。

僕は 東京パフォーマンスドール ( TPD )  を見ていたので、モーニング娘。を見た時に、アイドルファンとしてはむちゃくちゃ新しいとは思わなかったんですよ。だからあんまり気にしていなかったら、世間では TPD の数十倍の規模で人気になっていて。「 なんで?みんな見たことなかったの? 」って不思議に思ったんですけど、よく考えたら TPD って世間では誰も見たことがなかったんですよね。僕はファンとして知っていたから既視感があったけれども、そういうことじゃないのね、みたいな(笑)。実際につんくさんも TPD も見て研究していたみたいですよね。

平良:なるほど〜!そうやって前例を少しズラしてヒットを生んでいるわけですね。

吉田氏:アイドルは意外性への期待値が他のエンタメより高いので、そんな人もいるのか!?みたいなアイドルが本当に次々出てきますよ。

平良:面白いですね。すごく勉強になりました!

( つづく )

< 過去の記事 >
アイドルとは距離感のゲーム       吉田尚記氏 対談 # 1
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